私は長年、裏千家の茶道を続けています。その裏千家の千玄室大宗匠(101歳)が講演等の中で「平和という言葉を使わない世の中にしなければならない。私は安易に『平和』という言葉を使いたくない」という話をよくされます。「えっ?」って思いますよね。私も最初聞いた時は驚きました。しかしその意味は、「戦争とか無残な殺し合いがあるから、その反対の意味である平和という言葉が使われる。そもそも戦争や殺し合いがなければ平和という言葉もない。だから平和という言葉がない世界が、本当の泰平な世の中なのだ」「戦争の無残さ本当に知った上で「平和」という言葉を使うべき」というのです。大宗匠は学生時に特攻隊に所属しており、戦死した仲間から「戦争のない世の中にしなさい。そのためにお前は生かされているのだ」と叱咤されているような気がしていると話し、100歳を超えた今も世界中を訪問し戦争の無意味さと本当の平和の意味を説いています。そして「戦争は人類の堕落である。その堕落を止めるんだという強い思いを持って、語り続ける必要がある」と。
この度、被団協がノーベル平和賞を受賞しました。設立から68年。被ばくの実相を告発して、核兵器廃絶を訴え続けてきました。田中煕巳さんはそのスピーチで「核兵器の保有と使用を前提とする核抑止論ではなく、核兵器は一発たりとも持ってはいけないというのが原爆被害者の心からの願いである」と話し、「直ちに発射できる核弾頭が4千発もある。広島や長崎で起こったことの数百倍、数千倍の被害が生じることだ。いつ被害者にも加害者になるかもしれない」と力強く訴えました。そのスピーチの最後に「人類が核兵器で自滅することのないように!」とも。
彼らの語る「堕落」「自滅」という言葉はとても鋭く、重い言葉として受け止めています。戦争の本当の悲惨さを知らない世代が、ゲーム感覚で人殺しを受け止め、死のボタンを押すことを躊躇しなくなることへの警告。そしてその結果自らの命も滅びてしまうのだということをもっともっと真摯に受け止め考えていかなければならないのではないでしょうか。今回の平和賞の受賞を機に家庭や教育の場でも子供らに語り、考える場が増えていかなければならないと思います。🍙いばらき